見渡す限りの大地がヘドロのように濁った津波にのみ込まれていく。宮城県名取市の仙台空港をヘリで飛び立った直後の11日午後3時55分過ぎ、津波がついさっきまでいた空港全体をあっという間にのみ込んだ。どれくらいの被害があるか見当もつかない。もし、あの場にとどまっていたら……。血の気が引く思いで、夢中でシャッターを切った。
別の取材で青森県八戸市からヘリで仙台空港に戻る途中、携帯電話に流れたニュース速報で地震発生を知った。仙台市内の上空を飛ぶと、ビル屋上に人々が避難している様子が見えた。工場の煙突が倒れ、駐車場で車がぶつかり合っている。
取材を終えて午後3時50分ごろ、いったん太平洋に近い仙台空港に着陸した。だが、パイロットが危険を感じて即座に離陸。その直後に津波が押し寄せてきた。陸地全域がみるみるうちに土気色の波にのみ込まれた。倒壊した家の木材くず。自動車。空港に着陸していた飛行機。見渡す限りの光景が波に払われていく。津波で流された後で炎が上がり、流されながら白煙を上げて燃える民家もあった。燃料がほとんどない中、約10分間上空から撮影を続けた。【手塚耕一郎、撮影・毎日新聞航空部】
http://mainichi.jp/select/jiken/graph/20110311/
mainichi |